SKA で電波が届く系外惑星は、いちばん楽観的に見ても16個。磁場の手がかりは、木星サイズの「星と惑星の境目の天体」数千個から先に集まる
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系外惑星に磁場があるかどうかは、大気を保てるかどうかに直接つながる問題なのに、いまのところ測る手段がほとんどありません。2026年に公開された SKA(スクエア・キロメートル・アレイ)の科学書の一章で、アムステルダム大学と ASTRON(オランダ電波天文学研究所)の Robert D. Kavanagh さんを筆頭とする17人の研究グループが、この電波望遠鏡で何が見えるようになるかを数え上げています。結論の数字はやや意外です。惑星そのものの電波は、いちばん楽観的な条件でも16個しか届かない。かわりに、木星と同じ大きさの、星と惑星の境目にいる天体が数千個見つかり、その電波のふらつきから地球の数倍の質量の惑星まで探せる、という見積もりでした。
木星は太陽より「うるさい」
太陽系の惑星のうち、地球・木星・土星・天王星・海王星には自前の磁場があります。この5つは全部、低い周波数の電波を出しています。磁場に捕まった電子が磁極へ向かって流れ込むとき、大気にぶつかればオーロラの光になり、ぶつからずに磁力線のまわりを回り続ける電子は電波を増幅します。光も電波も元は同じ電子の流れなので、研究者はこの電波を「オーロラ電波」と呼んでいます。
木星はこの電波がとくに強く、40 MHz より低い周波数では、静かなときの太陽より最大1,000倍明るく見えます。しかもこの電波には、磁場を測るうえで都合のいい性質があります。電子が磁力線のまわりを回る回数は磁場の強さで決まり、出てくる電波の周波数はその回る回数そのものです。つまり、電波の周波数を読めば、出した場所の磁場の強さが直接分かります。木星のまわりの電波が40 MHz あたりで途切れるのは、木星の磁場の上限がそこに対応しているからです。
この仕組みが系外惑星でも働くなら、望遠鏡で惑星の電波を受けるだけで、その惑星の磁場の強さが出ます。磁場は恒星から吹きつける粒子の流れ(恒星風)をさえぎり、大気が宇宙へ逃げていくのを抑える役を担っていると考えられているので、惑星が大気を長く保てるかを見積もるうえで欠かせない数字です。
探しはじめて20年近く、確定した1件がない
木星の電波がこれほど強いなら、恒星のすぐそばを回る巨大惑星は、もっと強い恒星風を受けて、もっと明るいオーロラ電波を出しているはずです。この期待から、2000年代後半以降、系外惑星の電波を探す観測は何度も行われてきました。ところが、この章が書かれた時点で、誰もが認める検出はまだありません。「それらしい信号」の報告が2件ある、という段階です。
見つからない理由として挙げられているのは、おおむね次の4つです。
- 恒星風の強さが分からない。太陽に似た星の恒星風はもともと測りにくく、電波の明るさの見積もりがそのまま不確かになる
- 濃い恒星風や惑星の広がった大気が、電波を吸収したり、電波が出る条件そのものを壊したりする
- 電波は細い円錐の面に沿って放たれ、惑星の自転とともに向きが変わる。地球に向く瞬間が短く、観測の時間帯が合わないと見えない
- 惑星の磁場の強さが見当もつかない。巨大惑星の見積もりは 0.1 ガウスから1,000 ガウスまで幅があり、どの周波数で待てばいいかが決まらない
岩石惑星はさらに難しい状況です。岩石惑星の磁場は地球の10倍程度が上限と見積もられていて、その場合の電波は8 MHz より下に来ます。地球の電離層は10 MHz より低い電波を跳ね返すので、地上の望遠鏡では原理的に受けられません。岩石惑星のオーロラ電波を狙うなら、宇宙に電波望遠鏡を置く必要があります。
6,028個の惑星を613個に絞って計算した
SKA は、オーストラリア西部に131,072本のアンテナを並べる SKA-Low(50〜350 MHz)と、南アフリカのカルー地方に197台のパラボラアンテナを並べる SKA-Mid(350 MHz〜15.4 GHz)の2つの望遠鏡でできています。研究グループは、既知の系外惑星6,028個から、巨大惑星で、主星が太陽に似た主系列星で、SKA の空から見える位置にあるものだけを残しました。残ったのは613個です。
ここから先は、分からない量が4つあります。主星の磁場、恒星風の温度と流出量、そして惑星の磁場です。グループはそれぞれに2通りの場面を置きました。惑星の磁場は「弱い(25 ガウス)」と「強い(100 ガウス)」。主星は、磁場100 ガウスで恒星風の多い「活発な状態」と、磁場1 ガウスで恒星風の少ない「静かな状態」です。これに観測時間(1時間と8時間)と、望遠鏡の組み上がり具合(後述の AA* と AA4)を掛け合わせて、どれだけの惑星が信号雑音比5以上で見えるかを数えました。
結果はこうです。主星が静かな状態だと、どの条件でも1個も見えません。主星が活発な状態で、惑星の磁場が弱いと、見えるのは最大で3個。惑星の磁場が強いと、1時間の観測で5〜8個、8時間の観測で11〜16個でした。磁場が強いほうが有利なのは、周波数が高くなって SKA-Low の感度のよい帯域に入るためです。どの条件でも上位に並ぶのは、うしかい座タウ星b、TOI-2109 b、HIP 65 A b、WASP-18 b、ペガスス座51番星bの5つでした。
ただし、この見積もりには但し書きがあります。電波は細い円錐状に放たれるので、実際には短いパルスとして届くはずで、長時間の観測ではその信号が平均されて薄まります。確実に捉えるには、何度も観測を重ねて足し合わせる必要があるとグループは書いています。狙いを定めて待つより、狙いを定めずに広い空を繰り返し見張る探査のほうが、結果的に系外惑星のオーロラ電波を見つける近道になるかもしれない、という見方も添えられています。
本命は惑星ではなく、惑星にそっくりな天体だった
系外惑星からの電波が20年近く見つからない一方で、別の天体からは、惑星とよく似た電波が2001年からずっと受かり続けています。褐色矮星と、それに近い温度の軽い星をまとめた「超低温矮星」です。木星とほぼ同じ大きさで、質量は木星の13〜70倍。内部の構造も木星に似ていて、磁場が生まれる領域の性質が共通しています。章の表には、電波が確認された超低温矮星が24個まとめられていて、そのうち17個は惑星のオーロラ電波と同じ、短く繰り返す円偏光のバーストを出しています。
磁場の強さは数千ガウスに届き、木星より桁違いに強い。それでも、この天体が惑星規模の磁場のでき方を調べる手がかりになるのは、惑星に近い中身を持っていて、しかも現在の望遠鏡でもう電波が受かるからです。
SKA でどれだけ増えるかを、グループは別の方法で見積もりました。恒星風の見積もりに頼らず、超低温矮星の磁場の強さや自転周期、見る向きをこれまでの観測に合わせてばらつかせ、電波の円錐が地球を向く時間を計算して数えるやり方です。すると、25パーセク(約82光年)以内の超低温矮星のうち、SKA-Mid で見えるのは9.8〜18.5%。300パーセクまで数えると、1,600〜8,000個が受かる見込みでした。いま電波で見えている24個から、2桁増えることになります。
この9.8〜18.5%という数字には、別の意味もあります。これまでの観測では、超低温矮星のうち電波バーストが受かるのは5〜10%ほどでした。計算では、全部の超低温矮星がオーロラ電波を出していると仮定しているので、見える割合が1割前後に落ちるのは、電波の円錐がたまたま地球を向くかどうかで決まっていることになります。つまり、電波を出していない9割がいるのではなく、ほとんどの超低温矮星が電波を出していて、向きの合うものだけが見えている可能性が高い。SKA の数千個のデータは、この仮説を確かめる材料になります。
電波にはもう1種類あります。木星の磁場に捕まった高エネルギーの電子がつくる放射線帯からの、連続的でおだやかな電波です。超低温矮星の1つ LSR J1835+3259 では、2023年に複数の望遠鏡をつないだ観測で、この放射線帯が木星とよく似た形に写っています。SKA をほかの望遠鏡とつないだ場合、同じことが17パーセク以内の天体で可能になり、放射線帯の形が見える超低温矮星は300個ほどになる、と見積もられています。
電波のふらつきから、地球の数倍の惑星が見つかる
電波の数が増えると、もう1つの探し方が開けます。超低温矮星に惑星が回っていると、その引力で天体のほうもわずかに揺れます。電波源の位置を1,000分の1秒角より細かく追えれば、この揺れが見えます。SKA-Mid を世界各地の望遠鏡とつないだ場合の位置の精度は0.5ミリ秒角と見積もられていて、木星の13倍の質量の超低温矮星なら、地球の10倍の質量の惑星が1,000日の周期で回っているとき、22パーセク以内で揺れが捉えられる計算です。もっと近い天体なら、地球の数倍の惑星まで届きます。
この方法には、ほかの惑星探査と組み合わせたときの利点があります。惑星が主星の手前を横切る「トランジット」や、主星の往復運動を光で測る方法は、軌道を真横から見る系に強い。位置の揺れを追う方法は逆に、軌道を真上から見る系に強いので、これまでの手法が苦手だった向きの系を埋めます。惑星の形成理論は、超低温矮星のまわりに岩石惑星ができると予測しているのに、天体が暗すぎて確かめられていませんでした。電波で天体を追えるようになれば、この空白が少しずつ埋まります。
超低温矮星の電波には、まだ答えの出ていない謎もあります。木星のオーロラ電波は、火山活動で物質を吐き出す衛星イオが磁場に粒子を供給して強められていますが、超低温矮星の電波を支える粒子がどこから来ているかは分かっていません。候補の1つは、やはり噴き出しをしている衛星です。もしそうなら電波の強弱に衛星の公転周期が現れるはずですが、これまでに見つかっているのは自転の周期だけです。グループは、自転軸と磁軸が大きくずれている場合には、衛星が原因でも自転の周期しか現れないことを計算で示していて、衛星説を捨てる理由にはならないとしています。
望遠鏡はいま組み上がっている途中
章の計算に出てくる AA* と AA4 は、SKA の組み上がりの段階を指す記号です。AA4 は設計どおりの完成形で、SKA-Mid の197台と SKA-Low の512基地局がそろった状態。AA* は資金の見通しに合わせて先に完成させる構成で、南アフリカは144台(SKA-Mid の80台に、既存の MeerKAT 64台を組み込む)、オーストラリアは307基地局です。南アフリカの SKA-Mid は2026年1月に2台のアンテナの信号を合成する「ファースト・フリンジ」に到達しています。
最後に、時期について一言添えておきます。この章の初版が arXiv に出たのは2026年7月で、改訂版は8月です。本文には「系外惑星の電波の確定した検出はまだない」と書かれていますが、その直後の9月に、MeerKAT を使ってがか座ベータ星bから電波を捉えたとする査読前の報告が出ました。報告が確かなら、この章の見積もりはすでに最初の1件を迎えたことになります。なお、がか座ベータ星bは木星の10倍前後の質量で、主星から約10天文単位という遠い軌道を回っていて、この章が613個に絞った「恒星のそばの巨大惑星」とは別の種類の相手です。その電波の話は、約64光年先の巨大惑星から届いた電波が、系外惑星の磁場を初めて明かしたに書いています。
この章の数字は、分からない量を2通りに置いて数えたもので、惑星の16個も超低温矮星の8,000個も、前提が変われば動きます。それでも、系外惑星の磁場を知る手がかりが、惑星そのものより、惑星にそっくりな数千個の天体から先に集まってくるという見通しは、SKA の観測が始まったあとの電波天文学の進み方をよく表しています。
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出典
- Kavanagh, R. D. et al. (2026) "Discovering and Characterising Exoplanets and Ultracool Dwarfs with the Square Kilometre Array" Advancing Astrophysics with the SKA II(arXiv:2607.11507、v3 2026年8月11日) https://arxiv.org/abs/2607.11507
- Universe Today (2026-09-23) "SKA May Detect Magnetic Fields on Distant Exoplanets" https://www.universetoday.com/articles/ska-may-detect-magnetic-fields-on-distant-exoplanets
- SKAO "SKA-Low" https://www.skao.int/en/explore/telescopes/ska-low/"SKA-Mid" https://www.skao.int/en/explore/telescopes/ska-mid/"The construction journey" https://www.skao.int/en/explore/construction-journey


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