星を食べたブラックホールが遅れて「げっぷ」をする時刻は、食べる速さが上限の2% に落ちたときだった。太陽の10倍から数百万倍まで、同じ数字でジェットのスイッチが入る
この記事には広告(Amazon アソシエイトのリンク)を含みます。 星がブラックホールに近づきすぎると、潮汐力(ちょうせきりょく。天体の近い側と遠い側で引力の強さが違うことで生まれる力)で引き伸ばされ、ちぎれて、ガスの流れになってブラックホールのまわりに巻きつきます。「潮汐破壊事象」と呼ばれる現象で、銀河の中心にある超大質量ブラックホールが数年かけてこのガスを飲み込むあいだ、可視光や紫外線、X線、電波で明るくなります。 このとき電波で見える噴き出しを、英語の記事はよく「げっぷ」と書きます。飲み込みきれなかったガスがブラックホールの極の方向へ高速で吹き出す、ジェットや風のことです。ところが、このげっぷには、はっきりしない点がありました。星を引き裂いた直後に電波で明るくなる事象がある一方で、何か月も何年も静かだったあとに、急に電波で輝き出す事象がある。2024年に発表された電波の追跡調査では、潮汐破壊事象の4割ほどが、こうした「遅れてきた電波」を出していました。なぜ遅れるのか、いつ出るのかは、開いたままの問題でした。 2026年9月17日に Nature Astronomy に載った論文が、この遅れに規則を見つけました。著者はオーストラリアのカーティン大学(国際電波天文学研究センター)の Adelle Goodwin さんと、アメリカのプリンストン高等研究所の Andrew Mummery さんの2人で、2人が同等に貢献した研究です。結論を先に書くと、遅れてきたげっぷが出るのは、ブラックホールがガスを飲み込む速さが「上限の2%」まで落ちた時点でした。そしてこの2%は、天の川の中にある太陽の10倍ほどのブラックホールが、ジェットを出し始めるときの値と同じでした。 数千年の食事を数年に縮める潮汐破壊事象 ブラックホールの「食べ方」と「噴き出し方」の関係は、小さなブラックホールではよく分かっています。太陽の10倍ほどの恒星質量ブラックホールが相方の星からガスを吸い取る「X線連星」では、ガスを飲み込む速さが数週間から数か月で上がって下がる発作が起き、その途中で電波のジェットが点いたり消えたりします。どの速さでジェットが切り替わるかは、発作のたびに観測できるので、よく決まっています。 超大質量ブラックホールでは、そうはいきません。銀河の中心でガスを飲み込み...