コーヒーの香りを5分かいだ20人は、気分の点数が下がり、脳波の指標が上がった。けれど心拍は動かず、気分と脳波の変化は人ごとに一致しなかった
この記事には広告(Amazon アソシエイトのリンク)を含みます。 淹れたてのコーヒーを目の前に置いて、飲まずに5分、香りだけをかぐ。それだけで気分の点数は下がり、脳波から計算した「くつろぎ」の指標は上がりました。ところが心拍は変わらず、気分が晴れた人ほど脳波が動いていた、という関係もありませんでした。東京の昭和薬科大学の研究グループが2026年9月に Nutrients に出した論文は、見出しだけ読むと「香りで気分が変わる」なのに、中身を読むと「測り方が違えば違うものが見える」という話になっています。 群馬の旅館のブレンドを、薬学部の研究室で淹れる 実験の舞台は、昭和薬科大学の縦3メートル、横6メートルの研究室です。参加したのは同じ大学の学生20人(男性8人、女性12人)で、年齢は20歳から29歳。実験は2024年3月から2026年3月のあいだに行われました。 使ったコーヒーは、群馬県の旅館「辰巳館」が作っている「月夜野物語ブレンド F」という、マンデリンを土台にしたブレンドです。旅館のコーヒーを選んだ理由が論文に書いてあって、焙煎してからの日数を正確に管理できるほど生産の過程を追えることと、2年間同じ品質の豆を切らさずに手に入る量があることでした。 淹れ方も毎回同じです。挽いた豆20グラムを、85度のお湯400ミリリットルで、カリタのドリッパーとペーパーフィルターを使って3分ほどかけて落とす。できたコーヒーはガラスのサーバーに入れたまま、参加者から50センチほど離れた場所に置きます。参加者はふだんどおりに呼吸しながら、部屋に広がる香りの中に5分間座っているだけです。コーヒーは途中で温め直しません。温め直すと香りの成分が変わってしまうからです。 香りをかぐ前と後で測ったのは3種類です。1つ目は気分で、「POMS」という質問紙の日本語版(成人用の全項目版)を使いました。緊張と不安、抑うつと落ち込み、怒りと敵意、活気、疲労、混乱の6つの気分を点数にし、さらに5つの嫌な気分の合計から活気の点を引いた「気分の乱れの合計点(TMD)」を出します。活気を引き算するので、この合計点はマイナスにもなります。 2つ目は脳波です。使ったのは「Muse 2」という、額に巻くヘッドバンド型の市販の脳波計でした。研究用の電極帽ではなく、一般向けに売られてい...