週末に食べる時刻が平日から1時間ずれるごとに、男性の心血管疾患は14%多かった。遅くなる人より早くなる人で差が大きく、女性では見えなかった10万人の追跡

この記事には広告(Amazon アソシエイトのリンク)を含みます。

平日は7時に朝食、土日は10時にブランチ。夕食も週末は少し遅め。こういう週の過ごし方をしている人は多いはずです。この「平日と週末で食べる時刻がずれる」ことに名前を付けて、心臓や血管の病気との関係を10万人規模で追った研究が、2026年9月1日に Communications Medicine に出ました。フランスの大規模な栄養調査 NutriNet-Santé(ニュトリネ・サンテ)のデータを使った観察研究です。

結果だけ先に書くと、ずれが1時間大きくなるごとに、男性では心血管疾患の発生が14%、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)では21%多くなっていました。女性でははっきりした差は見えませんでした。そして、この研究でいちばん意外だったのは、ずれの「向き」の話です。週末に食事が遅くなる人より、早くなる人のほうが、数字は悪かったのです。

平日と週末で動く「食事の真ん中の時刻」

この研究が測ったのは「食事の時差ぼけ(eating jetlag)」と呼ばれる指標です。もとになっているのは「社会的時差ぼけ(social jetlag)」という考え方で、こちらは平日と休日で寝る時刻・起きる時刻がどれだけずれるかを表します。目覚ましで起きる平日と、好きなだけ寝る週末の差が大きい人ほど、体重や血圧、血糖の指標が悪い方向にあるという報告が、これまでにいくつも出ています。

食事の時差ぼけは、その「食事版」です。計算はシンプルで、1日の最初に口にしたものと最後に口にしたもの(水やお茶のようにカロリーがないものは数えない)の時刻の真ん中を「食事の中点」として、平日と週末でそれぞれ出します。たとえば平日が7時から20時なら中点は13時30分、週末が10時から22時なら16時。この差の2時間30分が、その人の食事の時差ぼけです。

NutriNet-Santé は2009年に始まったフランスのウェブ調査で、参加者は半年ごとに、連続しない3日分(うち1日は土曜か日曜)の食事を、食べた時刻まで含めてオンラインで記録します。研究チームは、登録から2年のあいだに平日と週末の両方の記録がある人を対象に、記録の平均から食事の中点を出しました。1人あたりの記録は平均5.8日分です。

対象になったのは10万4,806人。平均年齢は42.7歳で、79%が女性です。追跡の期間は中央値で8.1年。その間に起きた心血管疾患(脳卒中・一過性脳虚血発作・心筋梗塞・狭心症・急性冠症候群・血管形成術)は、本人の申告を診療記録と照らして確認したうえで数えています。

10万人の食事記録から出た数字

全体では、参加者の71%は平日と週末の中点の差が1時間以内に収まっていました。研究チームはこの人たちを「維持」と呼んでいます。週末に1時間より遅くなる「遅れ」が24%、週末に1時間より早くなる「前倒し」が5%弱でした。平均のずれは0.8時間で、極端に大きい人は多くありません。

追跡中に心血管疾患を起こしたのは2,368人で、そのうち冠動脈疾患が1,270人、脳血管疾患が1,098人です。ずれの大きさ(向きは問わない絶対値)と発症率の関係を、年齢・学歴・職業・家族歴・喫煙・飲酒・運動量・1日の食事回数・同居する子どもの数などを調整して調べたところ、全体では1時間ごとに心血管疾患が8%多くなっていました。

ところが男女に分けると、この関係は男性にしかありませんでした。男性では1時間ごとに心血管疾患が14%、冠動脈疾患が21%多く、女性ではどちらも統計的に意味のある差になりませんでした。脳血管疾患(脳卒中など)については、男女とも関係は見えていません。

この差は、体格指数(BMI)や摂取カロリー、ふだんの最初と最後の食事の時刻、食事の内容の傾向(洋風寄りか健康寄りか)を調整に加えても、ほとんど変わりませんでした。さらに、2014年に睡眠の調査に答えていた約5万7,000人に絞って、就寝時刻・睡眠時間・社会的時差ぼけまで調整しても、男性の数字は残りました(心血管疾患で15%、冠動脈疾患で20%)。つまり「週末に夜ふかしして朝寝坊する人の話」では説明しきれない、食事の時刻そのものに結びついた差だと読めます。

もうひとつ、ずれと発症率の関係は一直線ではなく、1.5時間あたりから頭打ちになっていました。研究チームはこれを、極端にずれる人が少なくて先が見えにくいだけかもしれないし、体内時計の乱れがある程度を超えるとそれ以上は上乗せされないのかもしれない、と両方の読みを残しています。

遅れる人より、早くなる人のほうが数字は悪かった

ここまでは「ずれの大きさ」の話でした。では、週末に食事が遅くなるのと早くなるのとで、違いはあるのか。研究チームは「維持」の人を基準に、「前倒し」と「遅れ」の人を比べました。

男性では、どちらのグループも「維持」より心血管疾患・冠動脈疾患が多くなっていました。ただし差が大きかったのは、週末に食事が早くなる「前倒し」のほうです。睡眠まで調整したモデルで、心血管疾患は「前倒し」が1.44倍、「遅れ」が1.14倍(こちらは統計的に有意ではない)。冠動脈疾患は「前倒し」が1.68倍、「遅れ」が1.36倍でした。

週末に早く食べ終わるほうが、むしろ健康的に聞こえます。けれど、この研究の結果は、方向よりも「平日と違うこと」そのものが問題だ、と読めるものでした。論文はこの結果を「向きによらず」と表現しています。なお、週末に食事が早くなるグループは人数が少なく(男性で約1,200人)、信頼区間は広めなので、1.68倍という数字そのものを重く受け取るより、「早くなる側でもリスクが消えなかった」点を押さえるのがよさそうです。

「前倒し」の人たちの特徴も、論文に書かれています。男性が多く、学歴が低めで、無職の人が多く、喫煙者の割合が「維持」より高い。1日の最後に口にするものが「食事」ではなく「間食」だった割合も、「維持」の14.4%に対して「前倒し」では18.2%、「遅れ」では16.0%でした。ずれそのものではなく、ずれやすい暮らし方に付いてくる何かが数字を動かしている可能性を、研究チーム自身が指摘しています。

もうひとつ目を引くのが、最初の食事の時刻で分けた分析です。参加者を、最初に口にする時刻の中央値である午前8時2分より早い人と遅い人に分けると、ずれと発症率の関係は「遅い人」にしか見えませんでした。朝食が遅めで、しかも週末にそれがずれる人、という組み合わせが、この研究でいちばん数字の悪い層でした。

因果とは言えない理由と、研究チームの読み

この研究は観察研究で、無作為に割り付けた実験ではありません。論文自身が「この研究だけから因果関係は立てられない」と明記しています。調整しきれていない要因の候補として、夜の光の量、仕事のストレス、運動や服薬の時刻などが挙がっています。

弱点もはっきりしています。いちばん大きいのは、参加者が実際にいつ働いているかを聞いていないことです。フランスでいちばん多い働き方として「月曜から金曜が平日、土日が休み」と仮定して計算しているので、シフト勤務や自営業の人、退職した人は、本当の意味での「平日と週末の差」が測れていません。研究チームは、夜勤らしい人(最初の食事が15時以降、または最後の食事が15時より前)や無職の人を除いた分析もしていて、結果は変わらなかったとしていますが、ずれの実態を小さめに見積もっている可能性は残ります。

参加者の8割が女性で、学歴や健康意識が高い人が多いことも、フランスの平均的な集団とは違う点です。実際、このコホートでは心血管疾患の発生率がフランス全体より低くなっています。男女差の読みについては、論文は「もともと男性のほうが心血管疾患が多い」「生活の時間割や職業が男女で違う」といった説明のほかに、マウスの実験で時間制限給餌の効果がオスにしか出なかった報告や、肝臓の体内時計の働きに雌雄差があるという報告を引いています。ただ、どれも仮説の段階です。

仕組みとして研究チームが置いているのは、体内時計の話です。脳にある中枢の時計は光で合いますが、肝臓や心臓など臓器ごとにある「末梢の時計」は、食事の時刻を手がかりに合うことが分かっています。しかも臓器の時計にとっては、光より食事のほうが強い合図だと考えられています。毎週、平日と週末で食事の時刻が動くなら、臓器の時計は毎週ずらされ続けることになります。心臓では、こうした時計の乱れがミトコンドリアの働きや血管を広げる仕組みに影響するのではないか、というのが論文の見立てです。

研究チームの結論は控えめです。他の大規模な追跡研究で同じ結果が確かめられれば、「最初の食事を早めにとること」と「平日と週末で食事の時刻をそろえること」の両方が、心血管疾患を減らす手がかりになりうる、と書いています。今は、まだその「確かめられれば」の手前です。

週末の朝寝坊とブランチが悪者だと決まったわけではありません。この研究が言っているのは、10万人の食事記録を8年追ったら、平日と週末の食事の時刻の差が、男性の心臓の病気と結びついて見えた、ということです。しかも遅くなる側だけでなく、早くなる側でも。食事の内容や睡眠と同じくらい、「いつ食べるか」の規則性が独立した要因として扱われ始めている、その入口にある研究だと思います。

関連する商品

この記事に関連する本や商品は、Amazon で探せます。

上のリンクから購入されると、このブログに紹介料が入ることがあります。

出典

コメント

このブログの人気の投稿

eclipseのコンソール出力の文字化けを直す方法

一括画像変換

C++/CLIの型変換